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マーケットプレイスのカニバリゼーションという神話への対応 (1)

Fareeha Ali - 2024年4月24日
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eコマースの急成長はとどまるところを知りません。この成長を継続的に後押ししている理由の1つに、マーケットプレイスモデルの台頭が挙げられます。しかし、このような明らかな変化が起きているにもかかわらず、オンラインマーケットプレイスは市場にカニバリゼーションを引き起こすだけだといった懸念を持ち、未だにマーケットプレイスへの参入を拒んでいる企業もいくつか存在します。しかし、この神話を鵜呑みにして、多くの企業が貴重な機会を逸しているのです。

詳しい説明に入る前に、まずは「カニバリゼーション」を定義することが重要です。これは、企業が自社代わる新しい商品やサービスを導入した後に、売上が減少することを表しています。市場シェアが拡大するのではなく、新商品が同じ顧客から既存商品の売上を奪ってしまうのです。

特にオンラインマーケットプレイスでは、他社商品の追加によって不要な競争が発生し、マーケットプレイスを運営する事業者の保有在庫が売れなくなることが懸念されがちです。しかし、実際には、信頼できるサードパーティー販売事業者と協力して品揃えを充実させることで、自社の売上を脅かす本当の脅威、つまり求めている商品が見つからないために、顧客が別のWebサイトへ移ってしまうことへの対応が可能になります。

Accenture社のフランス・ベネルクスオフィスで、欧州小売部門および消費財部門担当マネージングディレクター責任者であるLaurent Thoumine氏は次のように述べています。「ユーザーはWebブラウザー上で1回クリックするだけで、別のWebサイトに移動できてしまいます。マーケットプレイスを利用すれば、幅広い顧客層にとって唯一のエントリーポイントになり、貴重なデータを収集できるようになります。そして、そのデータを活用して、体験を最適化したり、新たな商品やサービスを開発したりすることができるのです。」

サードパーティーマーケットプレイスに関する最大の知見をまとめた「Enterprise Marketplace Index」によると、Miraklを採用したマーケットプレイスでは、2020年に販売事業者1社あたりのGMV(流通取引総額)が24%増加し、それと同時に販売事業者のネットワーク全体も46%拡大しました。販売事業者の増加と、1社あたりのGMV増加は、マーケットプレイスのGMVへ81%の成長をもたらしました。これは、販売事業者が互いの成長を奪い合うのではなく、むしろ新たな機会を創出していることを証明しています。

神話から機会への転換

オンラインマーケットプレイスには、ブランドアイデンティティを守りながらも、効率的で誘導しやすく、顧客が求めるものを提供することができるテクノロジーがあります。こういったマーケットプレイスモデルの利点を活用することで、顧客のロイヤリティを確保し、あらゆるニーズに対応することができます。

グッド(良い)からベスト(最高)へ

顧客の動向や購入習慣の変化があまりにも速すぎるため、1つの企業がすべてにおいて最高となることは不可能です。しかし、マーケットプレイスモデルでは、品揃えを増やして購買者が探しているものを提供するための敏捷さと柔軟さを手にすることができます。

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スポーツ用品分野の世界的リーダーであるDecathlon社は、強固で広範なプライベートブランド・コレクションを構築しています。実際、マーケットプレイスをローンチする前は、同社ビジネスの約90%が自社ブランドによるものでした。多くの顧客が欲しいものを正確に探し出せた一方で、同社は全ての検索結果に答えることはできませんでした。具体的には、顧客がある特定の商品を求めてサイトへ訪れた時、カタログ内にはその商品がないということしかわからなかったのです。その理由は、同社が取り扱っていない、在庫切れ、顧客が探しているものとぴったりの色やサイズがないといったものです。Decathlon社は2020年にマーケットプレイスをローンチするにあたり、厳選した高品質の販売事業者(その多くは国内のパートナー)にそのオンラインストアを開放し、品揃えを拡大して、購買者とのブランドプロミスをより充実したものとしました。。この販売事業者の追加を利用して、新たな商品カテゴリーだけでなく、既存の商品カテゴリーの品揃えも拡大することができました。この商品、範囲、価格の改善を通じて、最終的にDecathlon社は顧客基盤の成長を享受しています。

Decathlon社のデジタル責任者であるCharles-Emmanuel Nelis氏は次のように述べています。「すべてにおいて一番になれるわけではありません。だからこそ、マーケットプレイスは、品揃えを補完し、グッドからベストに移行するための素晴らしいツールなのです。当社は、お客様にいつでも「イエス」と言えるように世界中のベストな企業と提携しています。」

エコシステム全体への窓口

4年前、電子機器・テクノロジー分野の大手小売業者であるConrad Electronicは、あるビジョンを掲げていました。すべての顧客ニーズに応えられる「ワンストップショップ」になることです。目指すべき方向ははっきりしていたものの、そこに到達するまでの道のりは平たんではありませんでした。100年にわたるイノベーションの結果、Conrad Electronic社は80万点以上の商品とサービスを提供できるまでになっていました。十分な数ではありますが、社内で調査を行った結果、主要な顧客ニーズをすべて満たすには、さらに何百万点もの商品を追加する必要があることが判明したのです。

Conrad Electronic社は、オンラインマーケットプレイスプラットフォームを採用することで、信頼できる電子機器やテクノロジーの販売事業者のためのエコシステム全体の窓口となる機会を掴みました。現在、同社のマーケットプレイスからは600万点を超える(現在も増加中)商品やサービスが販売されています。もちろん、Conrad Electronic社が誇る品質と信頼性は損なわれていません。 Conrad Electronic社のCEOであるRalf Bühler氏は次のように述べています。「マーケットプレイスを開設したことでカニバリゼーションは起きていません。むしろマーケットプレイスによって、お客様とのつながりが明らかに強化されました。しかも、この成功をもってしても、市場機会の可能性を最大限に発揮するには、まだ長い道のりがあることを私たちは知っています。」

この取り組みにより、Conradはマーケットプレイスのビジネスを毎年2倍以上に拡大し、オンライン取引の50%以上が混合取引(Conradの商品とマーケットプレイスの商品で構成)となっています。素晴らしい成果ではありますが、Conrad Electronic社にとってはまだ序章にすぎず、新たな販売事業者、商品、サービスを迎え入れるとしています。

ビジネス全体に与える影響

マーケットプレイスモデルを通じて販売事業者を増やすことには、単にオンライン商品カタログを充実させる以上のメリットがあります。売上のカニバリゼーションよりも、むしろオンラインでの平均受注額が15%増え、店舗への来店頻度も向上し、3年間で1億4000万ドルの売上増につながるとオンラインマーケットプレイスは示しています。Miraklを利用したマーケットプレイスのROI(投資利益率)を分析した詳細レポートについては、Forrester Consulting社の「Total Economic Impact Study」をご覧ください。

また、マーケットプレイスは、検索エンジンへの最適化(SEO)を改善し、関連する検索でのサイトランキング上昇へと繋がる素晴らしい方法でもあります。ファッションとインテリアの分野でフランスのEC市場リードするLa Redoute社によると、オンラインマーケットプレイス経由したキーワード、説明、ブランド名の追加により、オンライントラフィック獲得における競争力を高めたと述べています。La Redoute社の副専務取締役であるPhilippe Berlan氏は次のように述べています。「マーケットプレイスを利用して検索順位を上げることで、新規顧客を獲得できるチャンスが大幅に上がります。オンライントラフィック獲得競争で勝つためには、このような強化を行うことが重要です。」

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それだけではありません。マーケットプレイスによって、SEO対策などの検索エンジンマーケティングの成果が、平均520万ドル相当分増加することがわかっています。

逃した機会をつかむ

カニバリゼーションという神話を乗り越えることで、企業はマーケットプレイスモデルの真の可能性を見出すことができるのです。これには、以前は持っていなかった製品やサービスを追加するための迅速な拡張が含まれます。ここで、逃した売上がどの程度の経済的価値に相当するかを簡単に見てみましょう。

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ヒント:提供されていない商品の上位検索数 x サイトの平均転換率 = 機会損失の金銭的価値

現在取り扱っていないか、在庫切れとなっているものについて、御社で最も頻繁に検索されている品目トップ10を洗い出してください。そして、これらの品目に、自社サイトにおける平均転換率を掛けます。導き出された数字は、その品目があれば得ることができた金額、つまり機会損失の金銭的価値です。このように逃した金銭的価値を知ることは重要ですが、オンラインマーケットプレイスがもたらす価値はそれだけではありません。オンラインマーケットプレイスプラットフォームによって、より多くの買い物客のニーズを満たし、商品とサービスのエコシステムを築き、SEOを強化し、顧客が求める「ワンストップショップ」になることができるのです。他の企業が躊躇している間に、プラットフォームのパイオニア企業はこのチャンスをつかんで顧客基盤を拡大させ、顧客ロイヤリティを強化し、オンラインショッピング体験全体を向上させています。

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Fareeha Ali,
Director of Competitive & Market Intelligence

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